龍騎の流儀
1) パイロット
毎週放送されるドラマは、1話ぶんを1週間で撮影しないと間に合わない(当たり前)のですが、『龍騎』は、第6話までは1話あたり10日くらいかかっていました。
シリーズのすべり出しだから、ゆっくり時間をかけて……という優雅なものではなく、やることがあまりに多くて、どうしても時間がかかってしまったのが正直なところ。
とくに第1・2話は、「パイロット」とも呼び、スタッフの気合の入れかたも尋常ではありません。撮影期間は1ヶ月弱。
というわけで、記念すべき第1・2話の撮影現場を追ってみましょう!

お箸を持つのはどっち? ● 11月20日
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スーツの完成した当日、「撮影会」を行ないました。月刊ベースの児童誌に掲載してもらうために、ドラマの撮影に先だって、スチール写真を撮るためのもの。
龍騎が、初めて世に勇姿をあらわした瞬間。
「スーツは逆像です。写真は逆版(ぎゃくはん)でお願いします」
『龍騎』の“仮面ライダー”たちは、鏡の世界・ミラーワールドに渡って戦う。 あんのじょう、さしもベテラン揃いのスチールマンさんたちも、
「もう少し右向いて……いや、左右逆だから、左か? アレ?」 |
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撮影用のカードも左右逆。「なんの呪文?」と思っていたスタッフも多数。 |
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ナイトの完成は12月13日。龍騎に遅れること3週間───マントの素材の吟味をつづけていたぶん、時間がかかったのでした。
あいにくの雨天のため、撮影会はステージ内にて。 |

クランクイン ● 12月14日
キャスト顔合せ・衣裳合せ・リハーサル・ロケハン・美術打合せ・アクション打合せ・安全祈願式・オールスタッフ打合せなどなどを経て、いよいよクランクイン(撮影開始)。ファーストカットは、やはりこの人・城戸真司。
第2話、グローバルプラザの屋上に駆けつけるシーン。完成作品ではカットされたとしても、現場にとっては大切な“最初のシーン”です。
階段を駆け上がる時、どんなに足もとが悪くても、ドラマでは上を見上げて走らないとダメ。下を見て走ったら、視聴者は「下に何かあるのかな?」と、不自然に思ってしまうのです。
自然に見えるように演じるには、不自然な走り方をしなければならない。
何度も足をすべらせながら、「これがドラマの演技か」……と学んでいく須賀さん。

つづいて屋上のシーン。作業員が襲われる → 蓮が駆けつけて変身 → 真司がドラグレッダーと契約 と、見せ場がつづきます。
襲われる作業員を演じるのは、押川<ギルス>善文さん。後々ゾルダ役で出演する彼ですが、初日からの登板となりました。
というわけで、須賀(真司)・松田(蓮)・杉山(優衣)、高岩(龍騎)・伊藤(ナイト)・押川(作業員)と、メインキャストが勢揃いする、にぎにぎしい初日に。
芝居にせよ変身にせよ、いちばんのクライマックスを、いきなり撮影初日からこなそうというのは無謀です。でも、キャスト&スタッフが勢揃いして、いっせいにスタートを切ることで、「われら『龍騎』チーム」という結束も生まれます。
撮影スケジュールを組んだ、鈴村チーフ助監督(写真左)の狙い。
いよいよ蓮の初変身(現場ベースで)。
ロングコートが一瞬ひるがえるのがキモ。画面の外に這いつくばって、コートの裾をひるがえらせているのは、アクション監督の宮崎氏。
「コートの芝居もアクションだ!」と、気合入ってます。
蓮が相対する、エレベーター機械室のようなオブジェ群。
屋上の風景にすっかり溶けこんでますが、実際には、美術部が持ちこんだ造型物。
美術部(組付)の福居氏は、作り物が少しでもリアルに見えるよう、ヒマを見ては細かい汚しや彩色に余念ありません。→
そのガラスに映りこむ「クモの足」を操る人々。
演出部(助監督)・小道具・操演・美術部が総がかり。
“人間より、ちょっと大きいモンスター”というのは、ホントはいちばん厄介なサイズ。
「足1本でも4人がかり」ということは、逆に「4人がかりなら操演できてしまう」ということでもあり。これより大きければ、「合成だ」「ミニチュアだ」と割り切れるし、縮尺も、さほど厳密に計算しなくて平気なのですけど。

モンスターとの格闘 ● 12月15日
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明くる12月15日、ビルの下でのアクション(第2話)。
美術部の中森氏が、ディスパイダー(クモ型モンスター)の組み立て中……って、い、いきなり木製? |
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これも、ディスパイダーのサイズが“中途半端”だからこその産物。
CGモンスターであるディスパイダーは、現場にはいないので、リアルな縮尺を維持しながら、カメラアングルを決めるのは至難の業。そこで、「大きさと形が現場で分かるように」と、美術部が用意してくれたガイドです。 ただのガイドなので、模造紙に絵を描くだけでもかまわないのに、体節や足までつくってしまうところが、美術部ならではの意地。 同様に、“美術部製ドラグレッダー”などもあります。 |

「俺たちができるのはここまで。あとは頼む……」という、全スタッフの祈るような視線の中、カメラにガイド用の玉を差し出すのは、Motor/liez の佐藤氏。
CGパートは、佛田(ぶつだ)特撮監督がプランニング → 佐藤氏以下CG部隊が具現化 → 特撮研・高橋氏が実写と融合……という黄金のシフト。
なぜ黄金かというと、みんな実写志向が強いところ。前年の『ガオ』で経験を積んできたチームですが、実写感の低さにフラストレーションを感じていたそうで、何倍も手間のかかる実写との合成を、率先して手がけてくれます。
彼らCG部隊が、どれほどの辛酸を舐めたかは、涙なくしては語れません。しかし、そんな苦労をカケラも見せず、ニコニコ顔でスタッフを安心させてくれる佐藤氏と高橋氏。
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「ディスパイダーがトゲを発射 → フレームインしてきた龍騎がトゲを弾く → カメラが龍騎を回りこむ → さらにドラグレッダーがフレームイン」というカット。第2話最大の見せ場。
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ロケ現場で撮影する素材は、「ディスパイダー上半身」「龍騎」「背景」の3つ。
“円形レール”(→)に乗ったカメラが、同じタイミングで円形移動を繰り返し、素材1つごとに回りのセッティングを変えて撮影します。太陽光の角度が変わらないうちに、テキパキと撮らないといけません。
1・2話でいちばん大事なカットなだけに、撮影前日から予行演習を重ねたのですが、やはり練習と本番とは違う。一番の誤算は、超巨大なグリーンバックが、予想以上に風にあおられること。
それでも奮闘の結果、撮影は成功。「うまくいきすぎて、まるでフルCGに見える」……と不満をもらすスタッフもいたほど。(^^;

責任感の強い特撮研・高橋氏が、アタマを悩ませた末、閃いた解決策は……
「絵コンテやイメージボードを、左右反転コピーしたらどうだ!」 「なるほど!」とヒザを打つ一同。でも、左右反転コピーって、よほどの多機能コピー機が必要だし、正逆両方のコンテが流通しちゃうと、かえって混乱のモト。
「ならば、各自ミラーワールドに馴れろ! 馴れないやつは置いていく!」 やっぱり、現場は根性……。

真司、国会に行く? ● 12月16日
12月16日。国会前にて、第1話・真司の初登場シーン。なぜ国会前かというと、主人公の初登場にインパクトを持たせると同時に、「ジャーナリストの世界」をかもし出すため。
ロケ場所を選定する、制作主任の東(あずま)氏の狙いです。
交通量の少ない日曜日に撮影しています。
あれっ、真司が2人? →
左は、「スクーターの真司が、人々の間をすり抜ける」スタントでスタンドインをつとめる、タケシレーシングの青沼氏です。
須賀さんの芝居をじっと見つめて、“真司”のクセを会得中。
と、いったシーンでは、衣裳やメットなどは、すべて2番(2つ)用意されます。
2つあるうち、須賀さんにどっちを渡すべきか(どっちがキレイか)、見比べて悩む持ち道具係・安達氏。

ナイト天地無用 ● 12月20日
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12月20日、逆さづりになってポーズを決めるナイト。
こんなシーンあったかな。何のための撮影でしょう?
答えは、「ナイトのファイナルベント」。ナイトがパラソルチョコ状態(笑)になる、あのカットです。
たかだか2秒ほどのカット(しかも大半がCG)のために、何時間も逆さづりの刑にあう、ナイト役の伊藤さん。ずっと仮面をかぶりっぱなしなのはもちろん、何キロもあるウイングランサーをビシッと構えつづけ。 |
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ただでさえ左右逆なのに、まして上下まで逆さまとなると、もうスタッフも頭ぐるぐる。
……そこで、ビデオモニターを上下逆さまに置いてみたVE(ビデオエンジニア)の石川氏。 けど、絵が乱れまくり。モニターって逆さに置いちゃダメみたいです。これまで誰も、モニターをひっくり返した経験なかったからなあ……。 |
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メリークリスマス! ● 12月25日
クリスマスの日も、当然のように撮影に明け暮れるスタッフ。というか、「何を撮影する日か」は意識しても、「世間様は何の日か」を考える余裕なんてありません。(;_;)この日は、令子こと久遠さんの初日でもあり。
令子を追いかけた真司が、「何かいるのが分かる!」となるシーンでは、移動車に2台のカメラが乗り、微妙に違う角度から真司の表情を追います。
物語の上では都内なので、場所が分かるように撮影していませんが、ロケ地は千葉県・幕張メッセ前。
蓮は、国際会議場に向かって「変身!」(写真→)。
この後、1カットで現実世界からミラーワールド側に回りこむために、この巨大ウィンドウが必要だったのでした。
じつは2台あったりして……(特撮用ミニチュア除く)。片や、油圧機構でキャノピーや座席が駆動する本格タイプ。もう片方は、接地のインパクトやブレーキターンの素材を撮るための軽量タイプ。

覆水を盆にのっける ● 12月29日
年の瀬も押し迫り、さすがに閑散としはじめた都内の一角で、人知れず謎の工事が……。
ブランク体龍騎が、看板を崩しながら落下するスタントシーン。
ビルの非常階段部分に、壊し用の看板を設置するという、美術部のアイデア。看板がうまく崩れるように、微妙な切れ目を入れていく……という地道&精密な手作業を、ハイライダー(高所作業車)上でつづけるのは、壊し物に賭ける男・中森氏。
高岩<アギト>成二氏演じるブランク龍騎もまた、ハイライダーからつり下げられて落下。→
一発勝負の大スタント。
落下コースは、看板の軸部の外側ギリギリでなければいけません。落とされる高岩さん本人が、ハイライダーのブーム位置を、細かく指示して調節します。なにしろ空中なので、いちばん現場に近い本人にまかせるしかありません。
仮面をかぶり、ほとんど前も見えない中、空中につり下げられた体勢で、テキパキと指示を出す高岩さん。

飯田恵のアパート ● 1月5日
第1の被害者・飯田恵のアパート周辺。令子&真司と、蓮&優衣のスレ違い。須賀さんが見つめる中、松村カメラマンが、真司になりきって歩きます(第2話の回想用のカット)。
信じられないほど寒かったこの日……。優衣こと杉山さんの鼻が、赤いのが痛々しいです。
令子の首に巻きつくクモの糸が、バックミラーに映る。───のを写すために、カメラが車内に。→
令子車はダイムラー・クライスラーのコンセプトカー smart。OREジャーナルが iMac なら、令子車は smart しかないっしょ!
令子のイメージカラーが白銀(ケータイも Mac も統一)だから、車もこの色……というのはタテマエで、ホントは「モンスターがよく映りそう」だからだったりして(笑)。
車内が明るく、小型車のわりに広く、あっちこっちも開けられるのは、まさに撮影向き。
そんな光景がカーブミラーにも映る───このカーブミラーも、装飾部が持ちこんだもの。
カメラアングルに合わせて、ミラーの角度を細めに調節するため、悪戦苦闘する装飾部・山岸氏&安達氏。撮影用といってもホンモノなので、それはそれは重たいです。

俺のOREジャーナル ● 1月6日
ようやく完成したOREジャーナルのセット。OREは、「Open Resource Evolution」の略。オープンソース運動ってのはあるけど、オープンリソースって何? もちろんコジツケなので、意味は知りません(笑)。
脚本・小林氏が、「大久保編集長は、“俺ジャーナル”って感じ」と言ったことからのネーミング。
セットのくせにLAN完備! ……とイバリたいところですが、なにしろ Mac なので、ケーブルをつなぐだけのカンタン設定。そんなカワイイ Mac たちを、容赦なく足げにする録音部(いえ、ホントは踏んでません)。
明瞭なセリフを拾うために、デスクにのぼり、あるいは床にはいつくばって、画面の外ギリギリから俳優さんの口を狙います。
金属製の重たいブーム(マイク付きのサオ)を、一日中かかげつづける小管氏&宇井氏。ふつうの人(私とか)なら、5分ともたないような体勢を、彼女たちは一日中つづけます。
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ラーメンをすする大久保こと津田さん。
どんぶりがないのは、このカットでは写ってないから。分かっていても、きっちり演技を欠かさない津田さん。汁をすする音までたててます。さすが!
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一方、鍋焼きうどんをすするのは、島田奈々子こと栗原さん。
リアルな湯気を出すために、アツアツにしすぎてグラグラ状態だったうどんを、一気にすすりこむガッツを見せました。
この一件で、現場スタッフにファンが急増。スタッフはそういうのに弱いです。じつは美形なのを、メガネの奥に封じ込め……という役作りも含めて。

ガラスまみれのクランクアップ ● 1月11日
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そして、ついに撮影最終日。合成やオープニング用の素材撮りが、延々とつづきます。
「折れたー!」となるヘロヘロ剣の切れッぱしとか、あらゆる合成素材を1つ1つ、ぜんぶ撮影していきます。
そんな中、黙々と大砲を用意する操演部・高木氏。→ |
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真司がドラグレッダーに襲われるシーンの、「割れる窓ガラス」の素材撮影。
アパートの窓をセットに再現し、圧搾空気の大砲でガラスを打ち砕きます。 ホンモノのガラスを粉砕するので、カメラやベース機材は遮蔽物のかげに退避。それでも、頭上から細かいガラス片がパラパラと……。
1・2話だけでも、いったい何枚のガラスを破壊したことか。 |

というわけで、1・2話田崎組のクランクアップ(撮影終了)は、1月11日の37時過ぎ(翌日の午後1時ともいいますが)。
もちろん、これで終わりではなく、合成・CG・編集などのポスプロ(ポストプロダクション=仕上げ作業)部隊は、むしろここからが正念場。2月3日の放送スタートに向けて、地獄の日々がつづくのでした……。
メイキング的な内容は、各話の「こぼれ話」でも取り上げていますが、このコーナーでは、コンセプチュアルなテーマを掘り下げていくつもりです。
次回は、「花鶏(あとり)」の予定です。










