シャンゼリオンという名の日々
再興編 第24話〜第31話


  [彷徨編(第17話〜第23話)]   [回天編(第32話〜第38話)]  

この項は、東映の白倉伸一郎(以下し)と武部直美(以下た)の個人的な回想に基づいた対談です。事実誤認もありえますので、ご了承ください。
[エピソード リスト]


ニワトリとタマゴ
た:まずは落穂拾いから。
し:15話(『超まぼろしのアレ』)あたりまでくると、いくつかの変節があるよね。山田さん(山田一善=アクション監督)が格闘技ネタに走るとか……。
た:あー、アクションにプロレス技が。
し:脚本ができてからモンスターデザインを起こしているのでは間に合わなくなったりとか。
た:デザイン先行になった。
し:もう着ぐるみはそれで発注かけつつ、それに脚本を合わせる形になった。
た:「このデザインだから話がこうなったぜい」ってのはありますか?
し:(26話『闇の騎士、出馬!』のデリンガーのモチーフが)電話だから、選挙活動に電話使ったとか。グルリス(32話『第2の戦士現る!』)は、「こういうとこからウンコが出てきたら面白いじゃん」ってウンコネタに。
32話、グルリスの“ウンコ”
#31 グルリス
た:ミミンガ(21話『モーレツに片思い』)は、耳かきモチーフだから膝マクラしたりとか?
※ モチーフについては[エピソード リスト]参照。
し:一番わかりやすいのはガメレオ(16話『バイトで霧子!』)。このデザインがあったので、ふだんは姿を隠して少女に取り憑いている、という話になった。
た:カメレオンだから。なるほど。
ホンが先の時は、(モンスターの)名前は井上さんがつけてて、あとは篠原さん(篠原 保=キャラクターデザイン)が?
し:そうそう。リストをよく見れば明確に線引きがあるじゃないか。マニヤー(7話『アイドル!! 私?』)とかシラガー(14話『サヨナラ、朱美』)とか、いい加減なネーミングの前半に比べて(笑)。「いい加減すぎる!」と篠原さんが怒ってたような(笑)。
た:モンスターには2種類あるということですね。
33話、左がフォンダー
#33 戦闘
し:フォンダー(33話『サバじゃねぇ!2』)の足をブレイダーに合わせて塗り直したとかもしたよね。
た:あー! ブーツを似せたり、タイツをミドリにしたり。そういえばそんな。ホン(台本)がそういう方向になりそうなので、あわててレインボーさん(レインボー造型企画)に連絡したら、もう(着ぐるみが)完成してたんだっけ。
し:本当はよろしくないこと。レインボーさんにも言われたんだよね、「ホンがあって、『このモンスターはこんな活躍するんだ』って思えばこそ愛着もわくし、『こういうシーンがあるなら、こう動くだろう。だったらこうしよう』という計算も働く。目的がわからずにただつくるのは、正直しんどいぜ」って。
た:篠原さんだって、「好きにデザインしろ」って言われても困っただろうね……。

屋根の上の宗方
し:17/18話の市山さん(市山 登=宗方 猛役)のナレーション、このためだけに市山さんを呼んだ。
た:『屋根の上のバイオリン弾き』の合間を縫ってもらって。そうそう、なんで市山さんがこの辺出ていないかというと……ということを言わなきゃいけなかったんだよね。
し:実質的には15話(『超まぼろしのアレ』)を最後に、ずーっと、32話(『第2の戦士現る!』)で復活するまでいない。総集編(20話)は、(撮影が)1日だけということで出てもらえたが。
た:舞台があるのは、最初からの約束だったからね。稽古と本番で、何ヶ月もかかるのねー。

シャンゼリオンは人知れずひそかに
た:暁=シャンゼリオンって認知されてないんだっけ?
し:一般市民に?
た:ダークザイドに。ダークザイドってバラバラなんだよね。
し:横の連絡ないし、上に報告とかしないし。
た:「あのバカ男がシャンゼリオンだったとは」みたいなシーン(17話『ライバルいっぱい』)があったよね。
し:17話までザンダーも知らない。知っても、モードスには教えない。どうも仲悪いらしい(笑)。
た:逆に、「ザンダーが知ってもいいのか」という話してなかった? 暁=シャンゼリオンと知ったら、ふつうは刺客を差し向けるという展開になるんじゃないかと。
し:そういうありきたりな展開にはしたくないって言ってたね。だったら、そうしないためには、何か理屈が必要なんじゃないかって言われた。
た:ザンダーは「いつでも自分でやっつけられるからいいや」って思ってるということだっけ?
し:ザンダー強いしと。
でも、もともと幹部って名のってても、どうせ誰も言うこと聞いてくれないし。
た:組織じゃないからねえ。
し:6話(『ごめんね、ジロウ』)で、ジロウに「シャンゼリオンを見つけしだい倒せ」って指令するじゃない。ザンダーの言うこと聞いてくれたの、あれだけかも。
た:ジロウって感心な子だよね(笑)。他はみんな、黒岩とか、反抗的なのばっかり。

再起の時来たれり
し:闇法廷(23話)抜けて、迷いがふっきれたというか、やっと目の前が開けた。自信持って「次はこうだ!」って考えられるようになった。
た:そうか。「迷走してた」って言ってたね。
し:暁と速水という軸とか、黒岩というキャラクターとか、そういうコア的なものが根を張ったのが大きいよね。というか、このコアだけしっかり守ってれば、あとはその上で遊んでればいいんだと開き直ったというか(笑)。
ただ、暁と速水が仲良くなりすぎて、逆に暁が希薄になってきたという心配があった。
た:ダブル主役みたくなってたね。
し:凸凹コンビになってきちゃった。それは何か違うと。暁も速水もおとなしくなっちゃうというか、丸くなっちゃうんだよね。すると、面白さを外に求めるから、「ゲストに暁たちが振り回される」という話になりがちになる。『埋蔵金』(22話)が典型例かな。
そうじゃなくて、暁が話を起こさなければいけない。事件だてはあくまできっかけで、「暁がどんなとっぴな行動をするか」を描くのがやはり本来だと。その辺をもう一度見直そうぜい、というのが個人的には24話あたりからのテーマだった。
た:原点に戻ろうと?
し:まあね。こういったキャラクター論は、ブレイダーの登場あたり(第32話〜)で、もう一度持ち上がるんだけど。



第24話
『人生最悪のナンパ』
脚本/井上敏樹
監督/小中 肇

暁がふとナンパした女性・小夜子。
その日から、小夜子は暁につきまとい始める。ヤバいと感じた暁はひたすら逃げまくるが、小夜子はひたすら追ってくる。彼女こそ、尽くして尽くして、ついには相手を滅ぼしてしまうダークザイド最凶の幹部・ザファイアだったのだ。

#24 小夜子
第25話
『怪盗クロアゲハ!』
脚本/井上敏樹
監督/小中 肇

クロアゲハなる怪盗が世間をにぎわせていた。
「すわ、怪盗VS名探偵!」とノリノリの暁だったが、このクロアゲハ、犯行予告の時間は守らないわ、予告とは別のモノを盗むわ、かなりいい加減な性格だった。
老爺に扮して捜査をしていた暁は、気のいい老婆と出会って意気投合。その老婆もナナコ=クロアゲハの扮装なのだが、2人はそれと気づかないまま、互いに本心をうち明けあうのだった……。

|  

ザファイア登場!(第24話)
た:当時は“ストーカー”って言葉、まだ一般的じゃなかったよね。
し:言葉としてはあっても、社会現象化はしてなかったんじゃないか。
た:なんと早かったんだろう。時代を先どり、というのだろうか(笑)。
し:わずか3年の間にこんなにメジャーになるとは。
た:ザファイア、三つ編みが女の子らしいと……でもちょっとグロテスクなのよね(笑)。そのアンバランスさが狙いなんだろうけど。
し:目がなくて口だけってコンセプトは、ザンダーとかもそうだけど、じつはシャンゼリオンやブレイダーもなんだよね。篠原テイスト。篠原さんはそうやってくくられるのイヤだろうな。
ギンガー(1話『ヒーロー!! 俺?』)とかシューザー(2話『ノーテンキラキラ』)とか、最初のころ本物の目を使う(※ スーツアクター本人の目を出す)とかってやってたじゃん。篠原さんは、目にこだわりがあるみたいね。その裏返し。
た:ザファイアの登場シーンは前の話(23話『ナゾの闇法廷!』)だけど、なかなかよかったね。ヒーローものっぽいじゃないですか(笑)。
し:あのためだけに、闇の牢獄のセット組んだし。
た:小夜子ちゃん(遠藤あゆみ=小夜子役)、なんか独特の顔をしてますよね。役のせいかもしれないけど、何考えてるか分からないところがあるというか。
し:基本的には美形なんだけど、単なるカワイイとか美人とかじゃないんだよね。
た:なぜ気に入ったんですか?
し:そういう底知れない雰囲気が、じゃない? 芝居もできる人だし。

怪盗X、帝都を擾乱(第25話)
た:24話も25話も、女の子VS暁。つづけたのはなぜですか?
し:別に他意はないない。そう言われればそうだね。散らすべきだったのかな。
た:25話、クロアゲハ。これも「好き」っていう人多い話ですね。
し:演出がスピーディで、「小中さん、こういう方向性も持ってるんだ」と感心した。引き出しが幅広い。
た:なるほどなるほど。監督もこないだ見返したしたらしくて、自分でも「いいなあ」って言ってた。気があいますなあ(笑)。
クロアゲハはもちろん、「オンナ暁」というコンセプトなんですよね?
し:いくら「オンナ暁」っていっても、野球拳はしないと思わない?(笑)
た:じつは「オンナ暁」っていうほどでもないか。暁よりはマジメ。
し:「平凡な日常とはおさらばでい!」っていう性格が共通してるんだよね。
た:この話のきっかけは?
し:単に怪盗もの。少し前から、「探偵もののくせに、あんまり探偵してないじゃん」って、意識して変装とかやってた流れの中で、やはり怪盗ものは一度はやらねばって。
た:探偵といえば怪盗と。「怪盗X編」とかいってたよね。21話(『モーレツに片思い』)あたりから、やたらに変装話が増えるのも、そういうことだった。探偵ネタはもっとやるべきだったね。
し:それと、21話で積み残した「相手を相手と知らずに友情がめばえる」ってネタを組み合わせた。
た:あれがここに活きてくるんですね。

怪盗ミイラ男(第25話)
た:暁の白い衣裳……。“怪盗”といえばゾロみたいなマスクして、マントひるがえして……という洋風なイメージがあったんですけど、なぜあんな忍者みたいになったんだろうと。 #25 暁とナナコ
し:衣裳合わせ、さては君いなかったね?
た:どうだったの?
し:大変だったんだから。クロアゲハが先だったんだけど、当然『CAT'S EYE』的なイメージがあるよね。でも覆面はぐとこがあるから、忍者風に。で、今度はモンシロチョウだということになるんだけど、まあ似合ってなくても、暁のはクロアゲハのパロディだし、遊びで「一度やってみたかったんだ」ってノリだから、多少ハズしててもいいかと。
た:あまりにハズしてたよ(笑)。彼って細いから、ミイラ男みたい(笑)。
し:しかもホータイがはずれかけてる(笑)。
あそこに至るまでには、すごい紆余曲折あって。結局、ありもの(ストック)じゃラチがあかないから、思いきって買ったりまでしたのに、でもこの言われよう(笑)。

老人は辛いですなあ(第25話)
#25 老人に扮した二人 し:お爺さんお婆さん演技はいかがでしたか?
た:あんまり(スタッフ間で)評判よくなかったんだよね。
し:そういえば、「行き過ぎた変装はやめてくれ」とか言われたな。
た:好きなんですか?
し:変装はたいてい好き。やるからには、突拍子がなければないほど。
た:老人とか老婆とかって、絵としてキレイじゃないというのはあると思います。実際のお年寄りがってことじゃなくて、老けメイクってどうしても、わざわざ汚くするようなことになるから。
し:たしかに。カワイイと思ったけどなあ……。
た:ホンで読んだときは、いいシーンだなと。ラストシーンまで変装のままだもんね。でも絵として見た場合は、ああやって落ちついてるより、生き生き活躍してるほうが楽しい。
し:たしかに、怪盗モードできゃんきゃん言い合ってるほうが楽しかったね。
た:ナナコも、たいへん評判のよかったキャラクターですね。暁くん(萩野 崇=涼村 暁役)も「好き」って言ってなかった?
し:彼はジロウも好きって言ってたな。朱美もるいもさしおいて(笑)。でもよく分かる。朱美やるいは、暁から見ればしょせん助手だしね。その点ナナコは独立した人格だし、対等に渡り合える共演者だったんだろうね。
た:彼女(牧原里佳=ナナコ/クロアゲハ役)、最終回にも出そう出そうとして、果たせなかったのよね。
し:舞台の無理がたたって病気して、郷里で療養しているという話だった。
た:そのままかどうかは知らないけど、引退してしまったという話。残念です。
し:ここにファンがいるぞと。
た:舞台をかなりこなしているので、「この人なら大丈夫だ」と思った記憶がある。私、演劇系好きだからさ、舞台をこなしてるという話聞くと、「だったら根性あるだろう」ってすぐ信用してしまう。オーディションで芝居の話をいろいろして、それでナナコオーディションの印象が強いんだ。
し:俺オーディションっていうと、誰それがバイトでパソコンのインストラクターやってるとか、よけいな話しか覚えてない(笑)。
た:あの人、カラオケ屋にも勤めてなかった? 打ち上げの時「そのカラオケ屋に行こう!」って、4次会だかで。いろんなことやってたんですね。
し:いままさに活躍中の人だから、匿名ということで。

 


  |
第26話
『闇の騎士、出馬!』
脚本/井上敏樹
監督/長石多可男

黒岩が都知事選に立候補。
そうはさせじと、対立候補として立つ暁だったが、弁舌でも目立ち度でも、ことごとく黒岩が一枚上手。
このままでは……と、黒岩の自分に対する気持ちを利用しようとするエリ。しかし、黒岩の本気をかいま見てしまい、動揺を禁じえない。
開票の結果──黒岩は当選し、華々しく政界デビューを飾った。

#26 黒岩選挙事務所
第27話
『朱美リターンズ!』
脚本/井上敏樹
監督/長石多可男

お久しぶりの朱美が事件を依頼。ダークザイドのしわざと見た暁たちは、病院に潜入するが、るいのドジで犯人を取り逃がしてしまう。
カンカンの暁はるいと訣別し、朱美が秘書に復帰することに。しかし、るいの真情を知った朱美は、自ら身を引こうとするのだった。

出世街道まっしぐら(第26話)
#26 暁
た:なんで選挙になったんですか? リクシンキたちに選挙運動まで手伝わせて(笑)。
し:最終回に向けて、「黒岩がどんどん出世していってしまう」という流れはどうだというプランがあって。
た:あー、最後には皇帝にまでのぼりつめてしまう、それまでの道すじを描こうと。
し:初めは町長とかから始めて、「おい、あいつ今度は市長になったらしいぞ」とか暁たちがうわさするという。「さすがは黒岩さんだ、人生設計がしっかりしている。それに比べてお前は!」って速水が(笑)。
で、どこから始めようかという話で、木村さん(木村京太郎=読売広告社プロデューサー)が「せめて区長くらいにしないとサマにならんだろう」というので、「どうせなら、初めから都知事くらいいくか」ということになった。だんだんじゃなくて、いきなり出世してしまったという。
た:きちんとした黒岩の出演は、闇法廷(23話)以来ですね。
し:この頃、小川さん(小川敦志=黒岩省吾役)は並行して舞台もやってたから、スケジュールの折り合いもキツかったのに、もう井上さん(井上敏樹=脚本)をはじめ、みんな黒岩がお気に入りになってて。
た:23話も、出演日数自体は少なかったから、かろうじて成立したんだよね。
し:だんだん出世していくのをうわさするというのは、出演してなくても黒岩話をつないでいけるという狙いもあったんだよな。
た:この時の小川さんの舞台って、やっぱりひとり芝居だか2人芝居だったかな。そういうのが多いみたい。ひとりで場をもたせられる力を持ってる人。
し:だからあのパワーで演説もできる。演説ができる人ってそうはいないよ。得がたい人だ。
た:しかもアフレコなのに。
私さー、やっぱりこの番組、つくる側じゃなくて、リアルタイムに観客として見たかったよ。毎週予告を見るたびに、「いきなり裁判!?」「いきなり選挙!?」「いきなりニュース!?」って(笑)。
し:(笑)
た:そういう風にワクワクして見れた番組って、他にあったかな。やっぱり一話完結ものの基本は、キャラクターづくりと。
し:まずキャラクターを確立して、それからやっと遊べるようになる。
た:ホントにそれだよね。単に選挙だけやったからといって、何にも面白くない。
し:そうそう。面白いのは、このキャラクターで、暁と黒岩の一騎打ちになるから。
た:そういうのができるのが、一話完結のよさでもあるわけか。

長石監督 in New York(第26話)
し:デリンガーの彼がかけてるメガネ。
た:目玉の浮き出る気持ち悪いヤツ。
し:長石監督がアメリカで買ってきたんだよな。
た:1週間くらいニューヨークに行くってのは、前々からの約束だったのに、「行っていい?」って何度も言われた。
し:ひとりだけ休暇をとるみたいな形になるのが、後ろめたかったみたいね。責任感。
た:そんなすばらしい監督とあんなにバトルして(笑)。
し:だからこそだってば。
アレは、「せめて何か『シャンゼリオン』に貢献するものを持ち帰らねば」って思ってくれたんだろうね。
た:それがアヤしいメガネというのが何とも(笑)。

リターンズ・リターンズ(第27話)
た:この時期、じつはメーンイベントとしては次の『朱美リターンズ!』に向けて大騒ぎだったんじゃなかったっけ。この話は、前々からあったんだよね。
し:朱美ちゃんがやめるときに、夏休みになったら出てねって。で、君が『朱美リターンズ!』ってキャッチフレーズをつけてたんだよな。タイトルだけ一人歩きしてた。
た:『バットマン・リターンズ』とか『ADブギ・リターンズ』とか、なんかリターンズものが流行ってたような記憶がある。
し:リターンズもの……?
た:で、朱美だったら長石組と?
し:それはあります。やはりメイン監督でないと、両者に対して失礼だろうと。だから、学校の夏休みと長石組の撮影スケジュールの兼ね合いで、26/27話のラインでやるのは……。
た:確定要素としてあったと。

ネーミングで勝負よ!
た:ところで、“朱美”って名前になったのはなぜ?
し:なぜといわれても。井上さんのネーミング。
た:「橘 朱美」って、何度もいうけど演歌歌手みたい(笑)。“朱美”をヒロインの名前にするって、今の時代になかなか大胆だと思った。
し:たしかに今風じゃないかも。昔の店の女の源氏名って感じだよね。だから、岩手の実家がどうのとかいう話にもなるんだろう。
た:“るい”は今のヒロインの名前って気がするけど。初めは“ゆい”ってつけてて、『ビーファイターカブト』に同じ名前のレギュラーがいるよって変えたんだよね。それで、ますます現代風になった。ネーミングってけっこういい加減よね。
し:“涼村 暁”もね。
た:初めは“冴木 暁”だったもんね。「えっ、サエキ・アキラ?」ってハタと(笑)。
※ 東映に“佐伯 明”というベテランプロデューサーがいる。近作は『新・御宿かわせみ』等。
し:気持ち悪いと。いやいや、恐れ多いと(笑)。で、「涼しげな名前がいいんじゃないか」「だったら“涼村”はどうだ」ってその場で。
た:おおもとの発想は、冴羽リョウじゃないの? 『CITY HUNTER』の。
し:“暁”は、光にちなんだ名前ということだけど、“冴木”は影響あったかも。「いい加減で女好きの探偵が、事務所かまえて、助手の女性がいて」という形だと、どうしても『CITY HUNTER』の影がちらつくよね。別にパクりをやるつもりはなくても。
た:いまでも聞くのよね、『CITY HUNTER』的なヒーローをやろう、って話。正義に熱く燃えるヒーローとかは、もう恥ずかしくてやってらんない。時代とズレてる気がするんだろうね。そうすると、何かというと『CITY HUNTER』が引き合いに出てくる。
し:15年も前の作品なんだけどなあ。いまだにテキストなんだね。
た:3年前の『シャンゼリオン』ではなく(笑)。

さらば戦友
し:この頃、『ガ○ファード』が終わった。
た:で、お客(視聴者)がこっちに来たりした? この2回、視聴率がよかったんだよね。「とりあえず見てみようか」という人がいたのかな。
し:でも『ガ○ファード』のお客は、これ見て満足はしてくれないよな(笑)。
た:比較されていろいろ言われたりしたよね。「なんでああいう風につくれないんだ」とか。それを求めるには相手が悪い(笑)。
し:岩田さん(岩田圭介=テレビ東京プロデューサー)は両方手がけてたから、「同じヒーローものなのに、こんなに違うとは」って。「企画書には、両方とも“現代のヒーロー”って同じことが書いてあったのに」(笑)
た:岩田さん、あれだけ忙しい人なのに、よくつきあってくれたよね。
し:愛してくれてたね。
た:というより、心配で目が離せなかったんじゃないかな(笑)。

 


第28話
『犬と猫と馬と鹿』
脚本/井上敏樹
監督/諸田 敏
#28 落書き
【武部画】(1996)

黒岩に都知事になった真意を問おうとするエリだったが、黒岩は取り合おうとしない。しかし、それはエリに裏切られた心の傷が癒えていないことの裏返し。それと気づいたユリカは、嫉妬に身を焦がして闇生物メガノスを放ち、エリを襲わせる。
身を挺してエリをかばったのは、黒岩だった。自分のために傷ついた黒岩に、エリは激しく口づけることで気持ちを伝える……。

#28 逃避行のふたり
第29話
『速水はヤミに!』
脚本/井上敏樹
監督/諸田 敏

敵どうしでありながら、強く惹かれあうエリと黒岩。しかしエリは、恋すればするほど、自分がどんどん嫌な女になっていくことに気づきはじめる。
一方、ヴィンスーのオーラを受けた速水は、暁へのコンプレックスが増幅されて闇生物ボチャッカに変貌した。エリを人質にとって勝負を挑むボチャッカ。
暁と黒岩は、それぞれの思いを抱えて戦場に赴く。暁は友のために、黒岩は愛する女のために……。
そしてエリは、黒岩に別れを告げる。

恋する気持ちは、憎しみに似ていた。

#29 救出される速水
|  

ロミオとジュリエットが麦畑
た:諸田組って、重いことばっかりやってる気がするんだけど。
し:新人監督に背負わせるものじゃない?
た:そうそう。そういう風には考えなかった?
し:考えてのことだって。シリアス話のほうがつくりやすいんだよ、コメディより。
た:諸田監督も、ずいぶん悩んだみたいよ。
でも、暁主体にシフトしようとしてたのに、なんでここでエリ編をやろうってことに?
し:一度12話(『ダルマさん転んだ』)みたいなことをやってしまうと、エリは“対黒岩”ってところに純化せざるをえなくなるんだよ。そのへんがエリちゃんの辛かったところ。
それもあって、黒岩=エリ話は12話で終わらせないで、なんとか引っ張ろうってやってたんだけど……。
た:よくある『ロミオとジュリエット』パターン。下手すると暁たち主役が脇に回ってしまう、という心配はなかったのかな。
し:あったからこそ、今のうちに芽を摘み取ろうと。言いかた悪いけど。暁とマジメなラブはなじまないし。『ジェットマン』みたいに最後まで引っ張ると気持ち悪いから、ここらでもう完結させてしまえと。
た:キスシーン、問題になりました(笑)。
し:そうだっけ?
た:スタッフにもさんざん言われた。「あんな濃厚なの、子供には見せられない!」とかって。
目の前で見るのと画面で見るのとは、印象が違うでしょうね。テスト(リハーサル)だの何だのって、目の前で何回もやるから、よけい強烈に見えるということもあるだろうし。
し:そうか。俺たちはいったん役者を信頼してしまうと、キャラクターとしてしか見ないから……。
た:「当然」「ありだ」と思ってしまうけど……。

9話の影(第28話)
た:「男の人を好きになったことなんか一度もないんだから!」とイバるエリちゃん。
し:原宿のオープンカフェ。エリとるいがしゃべってる後ろで……。
た:何か言ってたんだよね。
し:速水が暁に、「スパゲティ、好きか?」とかなんとか(笑)。スパゲティじゃないか。何だっけ? 監督もぜんぜん気づいてなかったらしくて、アフレコの時に「そんなこと言ってたか。やられた〜」って(笑)。
た:「ここにも9話の壁が〜」(笑)
し:結局、るいちゃんとかのセリフとかぶって、MAで絞られた(笑)。
同時に喋るとセリフが聞きとりづらくなるため、速水のセリフの音量が下げられた、ということ。

天才は自称のみならず(第29話)
し:29話、面白かった。
た:悩めるエリちゃんが「LOVE」(オブジェ)の前を横切る。印象的だった。「友情のキーホルダー」が気持ち悪い(笑)。
どうして速水化ける編に?
し:「人間がモンスターになる」っていうのは、井上さんの好きなネタなんだよね。エリ・黒岩一辺倒なのは前編(28話)だけに絞って、後編は逆に暁・速水に振ってバランスとろうと言ってたんだけど、だったら9話(『速水、燦然!』)以来の速水のコンプレックスを使うかと。
た:「心の闇」っていうのを持ってくるのは、井上さんらしいというか、この世界らしい発想だなとは思った。
でも基本に流れてるのは、エリと黒岩のケリをつけようということね。速水が暁を呼び出すために、エリちゃんを縛りつけたりして、流れが合流するんだよね。
し:13話(『バラとひまわり』)以来の、ヒーローものっぽい荒れ地で。
た:友情のキーホルダー渡されて、「よくもこんなものを……!」って。
し:怒りが頂点に達して心の闇が飽和する。「友情を思い出せ!」っていうパターンのように見せかけて、じつはその逆をついてる。
た:井上さんって、細かいところでもいろんなオリジナルをやってる。面白さというのは、基本的に「先を予想させて、その予想を裏切る」というところにあるじゃない。井上さんは裏切りの天才ですね(笑)。
『ジュウレンジャー』のあの話(26話『カキ氷にご用心』)を見てから、井上さんに心酔してるんです私。
し:井上さんの『ジュウレンジャー』って、1本しか書いてないアレか。
た:密度が濃いんだよね。一本調子じゃなくて、あらゆる小技が散りばめられてる。一瞬も気を抜けないというか。
あの頃から「いつかは仕事がしてみたい」と思ってて、『シャンゼリオン』が井上さんと聞いて、「ぜひやりたいです」って名のりあげたんだけど。
し:『パワーレンジャー』って、基本的にアクションだけ使ってストーリーは換骨奪胎してるのに、井上さんのアレだけはストーリーも全部まんま。世界に通用する井上本(笑)。
ただ、あれが井上さんのベストな形だとは思わない。あの人の才能だの資質だのを発揮させるには、そのための環境づくりからしてやらないとダメなんだよね。なにしろ天才だから(笑)。
た:『シャンゼリオン』では、それをやってたんじゃないの?
し:たまたま結果的にそうなった。最初からそうだと分かってやってたわけじゃないから。
大変なんだよね、ちょっと気を抜くと、『サヨナラ、朱美』(14話)とか16話(『バイトで霧子!』)みたいな、マトモな話を書いちゃうし。
た:「書いちゃう」って……(笑)。
し:いや、構成力がものすごくあるから、ストレートな話はさらりと書けてしまうんだよ。手を抜いて書き流しても、引き出しだけで、レベルの高いものが書けてしまうというか。
『シャンゼリオン』がそうだというんじゃないけど、別の番組で例があるんだよね。出来がいいから気づかれないんだけど、俺様の目はごまかせない(笑)。
だから、井上さんの力を遺憾なく発揮させるためには、彼が普通の話を書くときには、よほど注意して目を光らせないといけないという。それこそ一瞬も気を抜けないのだ。なんとめんどくさい(笑)。
た:天才は手がかかると(笑)。

超まぼろしのアレ…(第29話)
し:暁と黒岩というか、シャンゼリオンとガウザーが共同戦線を張るというのも、ポイントだった。
た:夜明けに2人が出撃していくシーン、カットされたといって井上さんが不満げだった。
し:尺が長いというんで、初めから撮影しなかったんだよね。暁と黒岩が、目も合わせずに同じ道を歩いていく。『バラとひまわり』のエリと朱美もそうだけど、井上さんは出撃シーンにこだわりがあるのかね。
た:そういえば幻のカット(未公開シーンの素材)とかって、どこにあるんでしょうか。もう永遠に失われてる?
し:もうないかもなあ。
た:もったいないねえ。20話の総集編に少し入れたりしたけど。
し:(6話の)ジロウとか入れたんだっけ?
※ 涼村探偵事務所で、二人が互いの寝首をかこうとしてためらうシーン。
た:あれは予告に使ったからシーンカットがバレバレだったので、サワリだけでもって思ったんだよね。そういう、未公開シーンを集めたコーナーをつくって、お得感を出そうとも言ってたんだけど、あれ1つしか入らなかった。
し:そういえば(12話の)本屋のシーンとかも入れようとしてたなあ。

 


  |
第30話
『ヒーローの先生!』
脚本/木下 健
構成/井上敏樹
監督/蓑輪雅夫

探偵事務所にオタク風の男が現われ、暁をヒーローとして更生させたいと申し出た。男は暁の一挙一動にケチをつけるが、まるで効果がないのに業を煮やし、闇生物ゴハットとしての正体を現わす。彼はヒーローオタクのダークザイドで、シャンゼリオンにヒーローとしての幻想を抱いていたのだ。
ゴハットはるいを人質にとり、マジメなスーパーヒーローとして助けに来いと通告する。
いま、暁にヒーローとしての資質が問われる(笑)。

#30 暁FS

助っ人参上
た:どうしてこの2本(30/31話)だけ、井上さん以外の人に(脚本を)
し:前々から、「(脚本家が)1人で大丈夫か」とはいわれてて……。
た:「井上くんが連続で書いたのは6本が最高記録だ」(※ 『鳥人戦隊ジェットマン』第1〜6話)とかって、さんざん脅かされた。それをここまで書かせてるってのは、たしかに周りからみると不安かもね。
し:で、「助っ人は用意しておけ」ということになった。
た:当初から、何人かの脚本家に、台本送るだけは送ったりしてたんだよね。
し:ただ、井上ワールドになっちゃってるから、井上さんが手直しを入れることになってももめない人=仲のいい人でないといけないって、この2人に絞って。ずいぶん前から、プロット作業とかはしてた。
でも、「助っ人を入れて一息つこう」という当初の目的でいえば、結果的に井上さんはそんなに楽にならなかった。
た:監修で大変だったものね。井上さん、なんてクレジットしたんだっけ。
し:“構成”だったかな? ホントは“監修”が正しいんだろうけど、それだと責任を負わせすぎるのではという話になったような。

ヒーロー!! 先生?(第30話)
た:とっても楽しい『ヒーローの先生!』ですけど、あ──じゃなくて(笑)“木下さん”の発想なんですか、ヒーローオタクっていうのは。
し:箸袋オタクまで来たんだから、ヒーローオタクはあるだろうという話は、前から井上さんとはしていたんだけど、それと関係なく、“木下さん”から出てきたんじゃなかったかな。
井上さんと話してたのは、「ヒーローオタクのダークザイドが、ホントにヒーローとして祭りあげられる」というようなやつで、形を変えて『サバ2』(33話)の田中元三になるんだけど。
た:変な字幕もいっぱい入れてたわね。
し:助監督が聞いてきてさ、技の名前を決めてくれって。アフレコ当日。
た:そうか、アクションの撮影のときには、とくに技の名前とか言わないですもんね。
し:なるべく恥ずかしい名前を……シャイニングアタックより、リクシンバルカンより恥ずかしい名前をって。「大車輪投げ……いやいや」とか言いながら(笑)。
た:スーパーヒーローマニュアル。恥ずかしい見出しがいっぱい並んでて(笑)。速水がそれを読みあげたあげく、「立派なテキストだ……」って唸るのは笑いました。
し:例のスタッフの彼が、知り合いの同人誌作家に頼んで描いてもらって……。
た:で、それをコミケで売ってたんでしょ。そんなことしちゃだめよ!
30話、ディープな層に受けがよかった。某人気投票では1位でした。
し:面白いとは思うけど、ベスト1とまでいわれると困っちゃうよね。どうしても俺らは屈折してるから……。
た:やはり1話完結の特性なのかな。この話だけ見ても面白いという。
し:「楽器鳴らしながら登場」っていう同じモチーフでも、17/18話のデスターとか、なぜかどこでもグランドピアノ弾いてるというような使いかたのほうが、個人的には好みなんだが。でもそれより、ズバッとストレートに暁がトランペット吹いてるほうが、わかりやすいだろうな。
たぶんね、俺らが違和感を持ってしまうのは、30話って基本的に既存のヒーローものを肯定しているからじゃないかと。
17話、花柳裕司(白石真之)
た:そうか、茶化してるように見えて。裏の裏は表ってこと?
し:そこが健全なとこだし、明朗快活なんだけど。
『シャンゼリオン』って、「ヒーローものは間違ってる」と思ってる人間がヒーローものをつくるという、屈折ゆえのシロモノってとこがあるじゃない。そういう屈折のない人にとっては、30話は素直に楽しめるだろうし、そのほうが健全なんだと思う。俺らがいかにダメかってことだよ。
た:屈折してるもんねえ……。
し:やはりヒーローの先生が必要だと(笑)。

ゴハット参上、ゴハット解決(第30話)
た:オタクの役は、初めラッパ屋の木村さん(木村靖司)を狙ってたんだけど、スケジュールがどうしても合わなかった。
し:ラッパ屋? トランペット屋ではなくて?(笑)
30話ではME用のトランペット奏者として、三松明人氏を招聘したりしている。ちなみに三松氏は「オンシアター自由劇場」でトランペット担当でした。
た:まさにこういうタイプの演技がハマりそうな人で。見たことない? ラッパ屋の芝居というのは……『海まで5分』(TBS日曜21時。1998年7月〜)とかあったでしょ。ああいうテイスト。
し:あの鈴木さん(鈴木 聡)ていうライター(脚本家)が座付き作家なんだっけ?
た:いまは、今度の朝ドラ(連続テレビ小説)の『あすか』(NHK。1999年10月〜)をカンヅメになって書いてるんだって。
し:たしか、TVデビューはもともと NHK なんだよね。ドラマ新銀河か何か。
た:ウンそうかな?
もともと“サラリーマン演劇”という肩書きがついてて、仕事を持ってる人が芝居をやってるというのが特色の劇団でした。いまはだいぶ変わったみたいですが。
小劇場系っていっても、流行りのとは客層も違うし、芝居も最先端というよりは古典的でカッチリしてる。何が起こるというわけでもないけど、細かいエピソードの積み上げが上手なんだよね。役者さんも個性派ぞろい。ちなみに、3話(『花嫁ゾロゾロ』)の花ムコCの福本伸一さんも、ラッパ屋の看板役者。
石黒さん(石黒久也=おたく/ゴハット役)は、バシーザ(9話『速水、燦然!』)の声をお願いしたという出会いもあって、最終的に。
し:声優だけじゃなくて、舞台もこなしてる人なんだよね。
た:逆に人間体だけじゃなくて、(ゴハットに)変身してからもあれだけ声をアテなきゃいけないから、芝居も声優も両方できる人でないと。
し:なおかつオタクに見える人というのは、ハードル高かったよな。
た:簔輪監督のこだわりもすごくて、石黒さんは大変だったんでしょ?
し:現場もアフレコもね。1回撮ってるはずなのに、なぜかアフレコでもう一度もめる。いちいち芝居を吟味するんだよね。
た:やはり石黒さんでよかった。声優さんとしてもプロだから、要望に応えられる。

 


第31話
『羊とパイと現金と』
脚本/荒木憲一
構成/井上敏樹
監督/蓑輪雅夫

不眠症に悩む暁たち。病院から失踪した少女ミクの捜査を依頼されるが、寝不足で朦朧として、ろくに役に立たない。
一方、手術が怖くて逃げ出していたミクは、尺八を吹く謎の虚無僧と知り合う。その虚無僧こそ尺八好きのダークザイドだったのだが、ミクは彼の尺八に慰めを見いだす……。

#31 虚無僧と誘拐犯
|  

人知れずひそかに…(第31話)
た:尺八の人(ジャブー)の優しさを、暁がぜんぜん知らないところがいい、って話なんだよね。
し:主人公の知らないところで……というのは、井上敏樹テイストではある。
た:井上さん、そういう悲劇がうまいんでしょ?
し:『シャンゼリオン』でいえば黒岩が典型例だよね。
た:そうか、人知れず死んでいくという。
し:車椅子の女の子というのが荒木さんテイストなんだけど、それを井上ワールドと共存させるには……という作業をしていた。
た:尺八の虚無僧を演じてるのは、JAC(ジャパン アクション クラブ)の西村さん(西村陽一)だけど、さて声優さんを選ぼうとしたら、「声も渋いから、ぜひ本人で」って、記録(スクリプター)の吉田さん(吉田由香)が。たしかにカッコいいよね。顔が見えないのは残念だけど。
し:カサとるとジャブーになっちゃうから(笑)。

私は記号を我慢できない(第31話)
た:私、初めから同情させる要素が揃っているというのは嫌いなのよね。
し:ストーリーじゃなくて、道具立てで、ということね。
た:子供もの・老人もの・病気もの。映画でもこの3つはあまり見ないんですけど。車椅子の少女なんか、出てきただけでもう……(笑)。
し:気持ちは分かるけど、使いかただと思うな。わかりやすい面もあるし。
た:“記号”ね……。
し:もちろん、「あたし立てたの!」とかって、車椅子の少女がとつぜん足が治ってしまったりとか、安直に奇跡を起こして感動を呼ぼうというのは、俺だって許せない。記号とかいって、病気の人だって、車椅子の人だって現実にいるわけじゃん。現実に苦しんでる人たちに失礼だよ。
た:これは手術を受けるまで、だからいいわけ?
し:ウン。キワキワで。
「手術が成功するところまで見せないとスッキリしない」という意見もあったけど、それは勘弁してほしいと。スッキリしちゃいけない。
た:そうすると、「尺八を吹いたら足が治りました」という話になってしまう。サギくさいよね。
し:手術を受けるにあたって、ちょっとだけ勇気が持てました──やっていいのは、そこまでじゃないかと。尺八が聞こえた、というだけでも、すでに充分すぎるほどの奇跡だと思うのね。手術が成功するしないは、ぜんぜん別の話で。
た:ウンウン。
し:ちょっと気を抜くと、記号はすぐ増殖してしまう。「少女のピュアな心にふれて悪人が改心する」とか、「最後の最後に悪人が命をなげうって少女を救う」とか、そういう意見も出てくる。でもそれは、記号的な設定に引きずられて、ストーリーまで記号化することじゃない。絶対にやってはいけないことだと思うんだ。ストーリーは世界観の問題になってくるし。
「車椅子の少女」という記号を抜いたときにも、成立する話にしておかないと。
た:そうか。たまたま車椅子でした、ということになってるわけね。
し:そうしないと、人権侵害や差別に近いものになってしまう。ジャブーが最後に尺八を吹くのも、「ひょっとしたら単に自分が尺八を吹きたかっただけかもしれない」という解釈も成立しうるギリギリのところで、とどめておかないと。
た:でも子供番組って、そういう当たり前のことが、すぐどっか行っちゃうような……。
し:子供番組だからこそ、なおさら気をつけないといけないと思うんだけど。記号がいけないというより、取り扱いを間違えると危険だぜということだよね。

眠れねえッ!(第31話)
た:“眠い演技”というのは、お客さん(視聴者)にはどうだったかなー。“老人”もそうだけど、ビジュアルで見て面白いかどうかという見きわめに失敗したかも。作り手側の責任だけど。
リアルにやってもつまらないし、マンガチックにしてもよけいつまらない。難しいね。
し:「ギャグは3段だよ」といいつつ、その結果、暁・速水・エリと延々と眠い演技がつづくのは、さすがにくどかったかもなあ。
た:エスカレーションなしで、同じ状況が繰り返されるというのは辛い。
し:監督は合成まで使って、映像的にエスカレートさせようと頑張ってくれたけど……。反省してます。

何を隠そうカクスコ(第31話)
た:そういえばこの犬は、なんと! 『家なき子』(NTV土曜21時。1994年4月〜)のリュウのピュンピュンくん。
し:名犬すぎて、なかなか吠えてくれなかった。
た:動物って難しいよね。思惑どおりにはいかない。
し:例の誘拐犯2人組が再登場する回でもあるんだな。10話(『サバじゃねぇ!』)からこんなに飛んで。
た:井上さんが「あの2人出したら?」って言ってくれたんだよね。
し:あの2人組は、10話(小中組)・31話(簔輪組)・34話(『友情ええやないか』長石組)って、みんな組(監督)が違うんだよな。
た:31話は、さすが簔輪組って感じで、ハデにホータイになったりして。
そうそう、10話のときにちゃんと触れられなかったから……この2人は、カクスコという、男ばっかり6人の劇団の人。アカペラが有名な、これもやっぱり年齢層の高い人たちに人気のある、特徴のない男ばかりが貧乏で小市民的な生活を送っているような……。
し:「特徴のない男ばかり」って、役者さんがじゃないよね(笑)。
た:違う違う(笑)。そういう人たちが、古道具屋とか長屋(!)とか旅館とかで、なんの変哲もない生活を送っているというようなテイストの芝居が多い劇団。すんごい面白いんだ。味のある人たちよ。みんなそれぞれ個性があって。
し:『ラブジェネ』(『ラブ・ジェネレーション』CX月曜21時。1997年10月〜)に出てたんだっけ?
た:『ラブジェネ』のオフィスとか『鬼の棲家』(CX火曜20時。1999年1月〜)の板前とかで、総出演してるんだよね。
原田さん(原田修一=誘拐犯B役)が役に合うと思って話を進めてたら、「井之上(井之上隆志=誘拐犯A役)とコンビでどうでしょう」って薦められて。それまで別の人で考えてたんだけど、それは行けると。
井之上さんはカクスコの中でも、とがったキャラクターをやることが多い、存在感のある人。あと、声もいいんですよ彼。アカペラでは低音パートだったかな。
カクスコの脚本・演出・出演をやってる、リーダー的存在の中村育二さんは、『金融腐食列島[呪縛](劇場公開中)にも出てる。
し:今回は「武部の小劇団講座」だったな(笑)。
た:「シャンゼリオン小劇場」とかいって、コラムにまとめようかと思ってたんだけど、つい、ここで喋って済ませてしまいました(笑)。

 

(1999年9月)

  [彷徨編(第17話〜第23話)]   [回天編(第32話〜第38話)]  

Back to Changerion Memorial Back to Changerion Memorial