レギュラーセット
たとえば『クウガ』では、スナック・ポレポレと城南大学研究室。『龍騎』では、喫茶・花鶏(あとり)とOREジャーナル。
このように、主人公のプライベート空間(とくに家)とオフィシャル空間(とくに職場)の2つをレギュラーセットにするのが、TVドラマのセオリーの1つ。
その2つが、両方とも、“美杉家”という1つの空間にまとまっているのが、翔一という主人公を擁する『アギト』の特殊性。
それだけに、“美杉家”というレギュラーセットは、他の番組よりウエイト大きいのです。
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レギュラーセット
シリーズを通して登場するセットが、レギュラーセット。
たとえば『クウガ』では、スナック・ポレポレと城南大学研究室。『龍騎』では、喫茶・花鶏(あとり)とOREジャーナル。 このように、主人公のプライベート空間(とくに家)とオフィシャル空間(とくに職場)の2つをレギュラーセットにするのが、TVドラマのセオリーの1つ。
その2つが、両方とも、“美杉家”という1つの空間にまとまっているのが、翔一という主人公を擁する『アギト』の特殊性。 本名すら明らかでない記憶喪失の青年と、自分の秘密をかたくなに守りつづける少女の、2人の居候が暮らす美杉家。
『アギト』という複雑な物語の中でも、本当はいちばん複雑怪奇な空間。でも、それを視聴者に感じさせず、翔一テイストでほんわかとまとめあげるのが、美杉家という舞台の使命。
外側は実際のお宅をお借りし、内側を美術セットとして建設するプラン。内外の印象を融合(ロケマッチと言います)させなければいけないので、ロケセットが決まらないことには、セットは設計すらできません。
美杉家たるべきお宅を求めて、各地を探し回る制作部。 「これは?!」と思うお宅が見つかるたびに、監督以下メインスタッフが急行しますが、撮影に不向きだったり、先方に断られたりで、何度となく、ロケハンは振り出しに戻ります。
何週間がたち、「この日までにロケセットを決めないと、もうOAに間に合わない!」というタイムリミットすら、たちまち通りすぎていきます。
「でも、それではセットが建ちませんが……」
「では、もう1日だけもらいます」と、祈るような気持ちで走り回った制作部・富田氏が、奇跡のように、理想のお宅に行き当たったのは、すでに12月中旬。
セットデザイン→建て込み→装飾(設計→建設→内装)に残された期日は、もう1週間もない。“突貫工事”という言葉を地で行く強行軍! 「この1週間で、1年が決まる!」という思いで突っ走る、美術&装飾チームの猛者たち。
田崎監督の注文は、「和洋折衷」。「海外を飛び回る美杉夫人の趣味が、前面に出ているという設定で」、と。
「ロケマッチ」「オシャレに」「住みやすく」「撮影しやすく」「美杉親子の表現」「翔一&真魚の表現」───
美杉家リビング
QuickTime VR のパノラマ映像。マウスのドラッグ操作で360度見ることができます。
(QuickTime を見るには……という技術的な解説はいたしかねます)
この階段1つで、「2階があるんだな」と、家の構造が分かります。また、天井によって、屋根までの距離感が分かる。
つまり、リビングを見ただけで、家全体のスケールが把握できる仕掛けになっているのです。
セットは、家の一部を切り取ったものであると同時に、家全体をも表現する。───映像を知りつくした大嶋氏ならではの仕事。
その代表が、あの階段なのですが………この話は後編にて。
「和洋折衷」ということで、インド風からイギリス風まで、古今東西のあらゆるグッズがひしめく美杉家。なのに、雑多なイメージにならないのは、このように「猫なら猫!」と、テーマを絞った配置がなされているから。
こちらは、高桑氏率いる装飾チームのワザ。
キッチン
翔一といえばキッチン。キッチンといえば翔一と。
リビングとの見晴らしを確保しながら、キッチンの人間が、リビングにいる家族にバレずに玄関にアクセスできる……という微妙な間取り。
壁の調理具が、コンロ脇のスパイスラックから食器棚にかけて、しだいに大きくなっているのもミソ。アクセントを与えると同時に、遠近法の効果で、部屋を広く見せます。
……なのですが、壁にかかっているザルは、よく見ればザルじゃなくてアジアンなカサ。いったい何に使うの、翔一君?(^^;
同じ“木づくし”でもテイストが違うため、キッチンの存在感が出ています。
2つのキッチン
美杉家のキッチンは、実際に使えます。水も火も電気も使えます。
「だから?」と思われるかもしれませんが、これは異例のこと。とくなキッチンやお風呂など、水回りはタイヘンなので、よほどのことがなければつくりません。料理番組ですら、セットのキッチンは飾り物だったりするほど。 『アギト』には、「翔一が調理や洗い物をしている」という、なにげないシーンが何度かありますが、それは、美術チームが、「翔一がなにげなく炊事芝居をするのが、よほどのこと」と受け止めてくれたからこその賜物。
飾り物のキッチンでは、水が使えません。たとえば『龍騎』第8話では、タライに水を溜めて洗い物をしてますが、これは節水のためじゃなくて、撮影の都合。
美杉家セットの驚異は、まだまだこれから……ということで、後編につづきます。
[美杉家・後編]
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